ジェミニ(双子)型界面活性剤は少量の添加でも従来型(一鎖一親水基型)に勝るとも劣らない界面化学的な機能を発揮できることから、低環境負荷な有機材料として知られている。ジェミニ型界面活性剤の基礎研究に関する最近の話題を考察すると、「低環境負荷」であることはもとより、プラスアルファーな価値をそこに組み込んだ「高機能化」にあるように思われる。そこで本研究課題では、外部環境の変化(刺激)に応答し、界面吸着能や分子集合体の形成能が任意に変化するジェミニ型界面活性剤の開発をめざしている。なお、以下に示す本年度の取り組みは、論文発表1件(受理済)、学会発表2件(内1件は国際会議)としてその成果をまとめた。 本年度は主に、オレイン酸のシス二重結合部にカルボン酸基(pH応答性官能基)を導入した陰イオン性のジェミニ型界面活性剤に関する研究を行った。塩基性の条件下では、この界面活性剤は水に分子溶解する。その結果、表面張力が低下したり、ミセル状の分子集合体が自発的に形成されたりするなど、一般的な「界面活性剤」としての機能を発揮した。一方、酸性ないし中性の条件下では水に不溶となり、空気と水の界面に単分子膜を形成した。本研究では、塩基性下で表面張力、ピレン蛍光ならびに動的光散乱、酸性ないし中性下で表面圧および赤外外部反射スペクトルの各測定を行い、液性の違いが界面物性に与える効果を評価した。 また本年度は、オレイン酸を出発原料とした非イオン性ジェミニ型界面活性剤の希薄および濃厚水溶液物性に関する検討も実施した。この界面活性剤には、温度応答性の官能基としてオキシエチレン鎖を導入してある。詳細な解析は次年度も継続的に行うが、ジェミニ型ならではの相状態変化がみられることを期待している。
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