研究概要 |
これまで色素増感太陽電池に用いる増感色素として、オリゴチオフェンに種々の長さのアルキル基や酸素原子を導入したカルバゾール系有機色素を開発し、それらを用いた太陽電池セルを作製し光電変換特性を詳細に調べてきた。今回、オリゴチオフェン上のアルキル基をヘキシル基に固定し、オリゴヘキシルチオフェン電子伝達系に適したドナー骨格を探索する目的で、種々の異なるドナーを持つオリゴチオフェン系有機色素の合成を行った。用いたドナー骨格は、N-エチルインドリン、N-アセチルインドリン、N-アニシルインドリン、N-エチルインドールおよびN-アニシルカルバゾールを用いた。これらの色素群を合成し、それぞれを用いて太陽電池セルを作製し光電変換特性を評価した。その結果、比較的ドナー性が高いと考えられる色素を用いた場合においては予想に反して光電変換効率は低下し、興味深いことに、チオフェンに伸長に伴って変換効率の低下が認められた。比較的ドナー性が低いN-アニシルカルバゾールが最も高性能の色素であることが判明し、オリゴチオフェンを電子伝達系として用いる場合における最適なドナー-アクセプターの組み合わせがあることはわかった。それには色素のHOMO-LUMOレベルが関与しており、電子供与性の高いドナーを用いた場合、HOMOレベルが負にシフトし、電解液からの電子の還元が起きにくくなっているため、変換効率が低くなっていることが判明した。 また前年度報告した色素(MK-24,25)および既存の色素(MK-2)を用いて固体型色素増感太陽電池の作製を行った。セルの構造は電解液の代わりに高分子電解層を用いるもので、アルキル基の長さの違いによる光電変換特性の比較を行った。その結果、アルキル基が短い色素(MK-24)は高い色素吸着密度により高分子電解層の光電解重合を促進し、ヘキシル基やドデシル基を持つ色素に比べ高い光電変換効率を示すことがわかった。
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