本研究では、疎水基の先端に蛍光プローブを導入した界面活性剤(蛍光性界面活性剤)を開発して、その毛髪組織への浸透挙動を蛍光発光により高感度検出することを目的としている。本年度の研究では、ピレンを有する蛍光性界面活性剤の開発を行った。具体的には、(1)カルボキシレート(アニオン性)、(2)四級アンモニウム(カチオン性)、(3)PEGエーテル(ノニオン性)の三種類を合成した。それぞれの界面物性を明らかとするために、臨界ミセル濃度、表面張力低下能、および占有面積を測定した。その結果、いずれの蛍光性界面活性剤も通常の界面活性剤と同様に界面物性を有することがわかった。さらに、ノニオン界面活性剤はアニオン界面活性剤と比較して、低い臨界ミセル濃度および表面張力低下能を有していることがわかった。これは通常の界面活性剤と同様の傾向である。蛍光性界面活性剤を0.2~40mMの濃度範囲で、330nm光照射による蛍光スペクトルを測定したところいずれの濃度でもピレン環に由来する強い蛍光発光が観測された。興味深いことに、臨界ミセル濃度以下の濃度では430nmに等発光点を帯、I1からI3バンド(375~430nm)の蛍光強度の減少とエキシマー発光(500nm)強度の増大が観測された。等発光点の存在から臨界ミセル濃度以下では完全に単分散していることが明らかとなった。一方、臨界ミセル濃度以上の濃度では全波長領域において蛍光消光が観測された。これらの結果をあわせ、蛍光性界面活性剤は界面物性と連動した蛍光発光特性を有することを明らかとした。
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