平成21年度は、酸化黒鉛を出発とするメソポーラスカーボンの合成を試みた。具体的には、黒鉛を酸化することで酸化黒鉛の均一な水分散液を調製し、1次元状鋳型物質として界面活性剤ミセルやチューブ状シリケートであるイモゴライトなどを混合し溶媒を除去することで、酸化グラファイトの層間に鋳型物質の挿入を試みた。その結果、層間に鋳型物質を挿入することはできたが、規則正しく配列させることは困難であった。そこで、メソポーラスシリカ薄膜を支持体として用い、その規則性細孔表面に沿って1枚のグラフェンシートを配置することで、目的とする材料に近いモルフォロジーをもつメソポーラスカーボンの調製を試みた。具体的には、導電性基板上にスピンコートによりメソポーラスシリカ薄膜を合成し、シリカ表面のシラノール基に有機アルコールを化学吸着させた後にこれを炭素化した。有機アルコールは単分子層吸着していたので、炭素化後にはグラフェンシート約1層分の厚さの炭素が形成された。1M NaCl水溶液に被覆前後のメソポーラスシリカ薄膜を3週間浸漬したところ、被覆前の薄膜は構造が完全に破壊されてしまったが、炭素被覆したものは3週間後にも長周期規則構造を保つことがわかった。すなわち、炭素被覆がほぼ完壁であることを確認した。メソポーラスシリカ薄膜を支持体にして合成したカーボンの細孔径は約2nmであり、目的としていた細孔径を実現することができた。さらに、調製したカーボンは内部抵抗が小さく、かつ規則性細孔内部のイオンの移動抵抗が小さいため、キャパシタ充放電測定において高いレート特性を示した。すなわち、グラフェンシート1枚で構成される規則性メソポーラスカーボンがキャパシタ材料として有望であることを明らかにできた。
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