研究概要 |
本研究では,異方性のある結晶構造を有し,耐食性,熱的・機械的特性に優れるムライト及び炭化ケイ素を候補材として,焼成中あるいは熱処理中において,気孔内部や焼結体表面等の焼成面での「その場」結晶成長やその配向・形態制御により,排ガス浄化用フィルターへの応用を目指した高性能セラミック多孔材の創製に関する基礎研究を行うことを目的とし,平成22年度はムライト及び炭化ケイ素の「その場」結晶成長・粒子配向に関する基礎研究をさらに進めるとともに,焼成面での「その場」結晶成長・粒子配向したセラミック多孔体の創製,キャラクタリゼーション及び特性評価を行い,プロセス・微構造の最適化を図ることを目的とした. 酸化鉄添加ムライトの粒成長及び焼結挙動を検討したところ,鉄はムライト結晶構造内に固溶するが,添加した酸化鉄の一部は原料中に含まれるシリカと反応して液相を生成し,ムライトの粒成長及び焼結を促進するものと考えられた.また,酸化鉄添加ムライトの熱伝導率は,酸化鉄無添加ムライトの値とほぼ等しい値を示した.熱衝撃試験を行ったところ,ΔT=200℃までは熱衝撃の影響はほとんどなく,熱衝撃前の曲げ強度を維持していた.また,酸化鉄添加ムライト多孔体に関して,これまでの知見を基に作製プロセスを検討したところ,ムライト原料に酸化鉄被覆ポリマー気孔形成材を添加する,あるいはあらかじめ鉄固溶ムライト粉末を合成し,この粉末を原料として用いることにより,特異な構造を有するムライト多孔体の作製に成功した.また,「その場」結晶成長・粒子配向制御したアルミニウム添加炭化ケイ素多孔体の圧縮強度は13~67MPaであり,これらの値は気孔率と微構造に強く依存した,以上の結果から,その場結晶成長・粒子配向制御したムライト及び炭化ケイ素多孔体の創製に関して基礎的知見を得ることができた.
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