研究概要 |
次世代のエネルギー変換・貯蔵デバイス開発の鍵は電極材料の改善にある.電極材料の改善には充放電反応機構に基づき,高容量,高出力,長寿命を実現可能な電極構造を見出すことが必要である.電極/電解質界面は電池反応の開始点であるが,様々な因子が関与する複雑系であり,既存の手法では界面構造,反応機構ともに詳細な解析が困難である.本研究では,リチウム電池電極材料の界面構造変化をその場観測し,界面構造と電極特性の関連を明らかにするため以下の課題を実施している.1) 界面反応解析に適した反応系の構築:単一配向かつオングストローム単位で表面形態を制御した薄膜電極による電極反応因子の分離,2) 各因子が与える電池特性への影響の評価:材料,反応面,表面形態が異なる電極を用いた電気化学測定,3) 表面結晶構造のその場解析手法の確立:in situ放射光X線表面回折,表面XAFS測定による表面構造の追跡.結果として,Nb:SrTiO_3単結晶基板上に成長させた層状岩塩型LiMO_2(M= Mn, Co, Ni)で,初期充放電中における電気化学活性,表面皮膜形成過程が結晶面により変化することを見出した.さらに表面回折より,電極表面構造は電極内部と異なり初期過程で原子配列が乱れ,後に再配列し,一定となることを明らかにした.このことは変化後の表面構造が電池特性に影響する可能性を示唆し,新しい材料合成の指針として重要な知見が得られた.現在は,より詳細な解析を目指して表面XAFS,中性子反射率測定から電子状態,リチウム挙動の解析を試みている.
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