研究概要 |
昨年度までにリチウム電池正極材料のエピタキシャル薄膜をモデル電極として,放射光X線表面回折測定から,電池作製時に電極表面の原子配列が乱れること,初期充放電中に再配列することを見出した.このことは優れた特性を示す電極電解質界面を構築するためには再構成構造制御が鍵であることを示唆している.本年度は,より詳細に界面反応機構の解析を行った.課題の詳細と成果を以下に挙げる.1)単一配向かつオングストローム単位で表面形態を制御したLi_4Ti_5O_<12>エピタキシャル薄膜をパルスレーザー堆積法で作製した.さらに電極表面に固体電解質Li_3PO_4を修飾したLi_4Ti_5O_<12>エピタキシャル薄膜を作製し,充放電特性を比較した.その結果,固体電解質Li_3PO_4を修飾した薄膜電極は優れたサイクル特性を示すことを明らかにした.2)in situ放射光X線表面回折でLi_4Ti_5O_<12>薄膜/液体電解質界面とLi_4Ti_5O_<12>薄膜/Li_3PO_4固体電解質界面におけるLi_4Ti_5O_<12>結晶構造変化を追跡した.Li_4Ti_5O_<12>薄膜/液体電解質界面では初期過程に岩塩型へ再構成が観測されたのに対し,Li_4Ti_5O_<12>薄膜/Li_3PO_4固体電解質界面では再構成後もスピネル構造を維持した.以上の結果より,表面修飾により再構成構造が変化し,電極安定性を制御できることを明らかにした.3)Li_4Ti_5O_<12>薄膜電極にin situ中性子反射率法を適用することで,充放電反応中における電極から電解液側に渡るLiの濃度勾配を解析し,電解質側において電極から数10nmほど濃度勾配が存在することを明らかにした.以上より,高速かつ優れた安定性を示す次世代電池の開発には,電気化学反応場における電極表面構造・電解質構造を制御することが必要である.
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