本研究において、低融点のアルカリ金属炭酸塩共晶系をフラックスとして加える独自の合成法を用いることにより、六方晶II型構造を有する単相の希土類オキシ炭酸塩を極めて簡便に合成可能であることを見いだした。そこで、希土類オキシ炭酸塩を母体とする蛍光体を合成し、様々な組成の蛍光体を検討した。その結果、ガドリニウムとイットリウムの複合オキシ炭酸塩(ガドリニウム:イットリウム=95:5)からなる母結晶に、+3価のテルビウムイオンを11%の割合で賦活した緑色発光蛍光体が、市販のリン酸ランタン系緑色発光蛍光体のおよそ1.3倍の発光強度を示すことを明らかにした。 さらに、希土類オキシ炭酸塩蛍光体の構造を精査した結果、高い発光強度を示す蛍光体はいずれも層状の結晶構造を有しており、発光イオンを多量に賦活しても濃度消光による発光強度の低下が起こりにくいことが、発光強度が高くなる理由であることがわかった。そこで、同様の結晶構造をとる、希土類オキシ臭化物、希土類オキシ塩化物、希土類オキシ硫酸塩、希土類タンクステン酸塩を母体とする新しい蛍光体をそれぞれ合成し、それらの発光強度を調べた。その結果、特に希土類タンクステン酸塩を母体とする蛍光体が著しく高い発光強度を示すことがわかった。中でも、タングステン酸ガドリニウムを母体とし、これにカルシウムとユウロピウムを添加した赤色蛍光体の発光強度は、市販のオキシ硫化物系赤色発光蛍光体のおよそ15~29倍の発光強度を示すことを明らかにした。本研究成果について、特許出願を行うと共に、学会ならびに論文発表を行った。
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