本研究では新規な4価イオン伝導体の開発、さらには『固体中を伝導できるイオンの最高価数』を明らかにすることを目的とし、4価イオン伝導に適した新規結晶構造の探索と、固体中を伝導できる4価イオンの種類およびそのイオン伝導性を目指した。 平成21年度は、新規な4価イオン伝導体としてTi^<4+>イオンおよびGe^<4+>イオンを伝導イオン種とする固体電解質の開発を目指した。Ti^<4+>イオンは価数変化を起こしやすいことからイオンではなく電子が伝導する可能性があり、またGe^<4+>イオンは共有結合性が強く周囲に存在するアニオンとの相互作用が強いため、これまで固体中の伝導イオン種としては不適切と考えられてきたが、本研究では結晶構造および構成イオンを厳選することで、これらのイオンにおいても固体中を伝導できると考え、ナシコン型構造を有するTi^<4+>イオン伝導体:Ti(Nb_<0.8>W_<0.2>)_<5.0/5.2>(PO_4)_3、Ge^<4+>イオン伝導体:Ge_<41/40>NbP_<2.9>Si_<0.1>O_<12>を合成した結果、これらが純粋なTi^<4+>イオン伝導性またはGe^<4+>イオン伝導性を示すことを明らかとした。また、その4価イオン導電率はこれまでに報告されているZr^<4+>やHf^<4+>イオンと同程度の高いイオン導電率を示すことが明らかとなった。 これら平成21年度の成果により、これまで固体中の伝導が実証されていなかったTi^<4+>イオンおよびGe^<4+>イオンも固体中を伝導できることが明らかとなり、伝導4価イオン種の候補が増大した。特に、Ti^<4+>イオン伝導体に関しては、国際的に著名な材料科学の月刊誌Material Research Society Bulletinのトピックスとして紹介され、世界的にも高い評価を受けている。
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