研究概要 |
窒素ドープ酸化チタン(N-TiO2)は最も広く研究されている可視光応答型光触媒のひとつであり,光触媒反応を理解することを目的として光励起により生成した電子正孔対(キャリア)の初期過程を検討している.本年度は昨年度に構築した粉末のままで過渡吸収を測定する高感度フェムト秒拡散反射分光法でN-TiO2粉末の測定を行い,次の知見を得た.1、Nドープ前のTiO2粉末を測定したところ,キャリア初期過程がTiO2微粒子膜での報告例とほぼ一致した.本測定手法の信頼性が示された.2、紫外光(360nm)励起下でN-TiO2粉末を測定した.(1)電子に由来する信号がTiO2粉末と比較して速く減衰し,スペクトルは短波長シフトした.Nドープにより生じたO欠陥へ電子が深くトラップされる過程が観測された.(2)Nドープ量が異なる3種類のN-TiO2を比較したが,著しい変化は観測されなかった.3、可視光(450nm)励起下でN-TiO2粉末を測定した.(1)励起直後に速い信号減衰が観測された.吸収の無いTiO2粉末でも観測されたため,測定手法由来の信号と考えられる.(2)励起して10ピコ秒後には深くトラップされた電子のスペクトルを与えた.紫外光励起と比較して電子トラップが速いことがわかった.(3)その後,信号はナノ秒までほとんど減衰しなかった.Ti3d←N2pの電子遷移によるキャリアの存在が示された.4、金属担持したN-TiO2粉末を紫外光(360nm)励起下で測定した.(1)Ptを担持した場合,電子に由来する信号が数ピコ秒で約20%減衰した.Ptへ電子移動する過程が観測された.(2)Feを担持した場合,スペクトルが短波長シフトした.この起源については現在検討中である.5、測定装置の信頼性,Nドープ量依存性,励起波長依存性について学会発表して議論した.
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