デオキシリボ核酸(DNA)は生体において遺伝情報を担う高分子物質であり、生体分子としては比較的高い化学的安定性を示す。また、塩基間水素結合による二重らせんの形成や、塩基のπスタッキングによる分子内部での一次元導電性など、他の物質には見られない特徴的な性質を有している。 本研究では、高い潜在能力を秘めた機能性分子であるDNAを、強度と透明性にすぐれた無機材料であるシリカと複合化させることにより、DNAのデバイス応用を実現する新しいプラットフォームを構築することを目的とする。 平成22年度は、当研究室で独自に開発している、粒径15~30ナノメートル程度の単分散球状シリカナノ粒子の表面に一本鎖DNAを結合させ、相補鎖の形成を利用してDNAとシリカナノ粒子が3次元的に組みあがったナノ複合構造を得ることを試みた。赤外吸収スペクトル測定や熱重量分析、元素分析などにより、シリカナノ粒子にDNAが導入されたことを確認した。しかし、粒子表面へのDNA導入量が、一粒子当たり数本と少量であったため、相補鎖形成によるDNA/シリカ粒子複合体の形成には至らなかった。現在、粒子修飾条件の改善により、導入量を増加させることを試みている。 一方、本研究の知見を応用し、単分散球状シリカナノ粒子をシードとして水溶液中で自己集合させ、シリカ源を追加添加して再成長させることにより、ロッド状の構造を有するシリカナノ粒子を得ることに成功している。水溶液へのアルコールや塩の添加量を増減させることにより、ロッド長さを系統的に変化させることができた。
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