研究概要 |
本研究は、高度に高次構造制御された光学活性高分子であるセルロースやアミロースを出発原料とし、『水酸基を位置特異的に誘導体化した多糖誘導体の合成手法の確立』と、『導入する置換基の精査による機能発現』に関する研究を目的とするものである。平成23年度は昨年度に引き続き、セルロースの位置特異的誘導体の合成と評価について検討を行った。まずはグルコース環の2,6位の水酸基にテキシルジメチルシリルクロライド(TDMS-Cl)を反応させて保護し、3位の水酸基をアリルエーテルに変換した後に、2,6位を水酸基に戻してフェニルイソシアナートを反応させた。得られた誘導体は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用キラル固定相に用いて光学分割能の評価を行った。しかし、誘導体は位置特異的に合成できたものの高い光学分割能は示さなかった。3位に導入したアリル基のかさ高さが低く、またフレキシブルであることが原因として考えられる。そこで次に、TDMS基で2,6位を保護したセルロースの3位の水酸基にイソシアナートを反応させた後、2,6位を脱保護し、3位とは異なるイソシアナートを反応させることで2,6位と3位とは異なるカルバメート部位を有する誘導体を合成した。結果は、3位にアリル基を有する誘導体とは異なりTDMS基の完全な脱保護が達成できず、一部、2,6位に導入したカルバメート基の切断も確認されたため完全な位置特異的誘導体の合成が行えなかった。しかしながら、光学分割能評価では、高い能力を持つことが確認され、3位にはかさ高さの高い側鎖の導入が必要であることがわかった。今後、脱保護条件等を検討することで完全な位置特異的誘導体が得られれば、より高い光学分割能を有する誘導体が得られることが期待される。
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