研究課題
前年度に引き続き、酸化インジウムスズ(ITO)陽極層と有機層の界面に挿入した三酸化モリブデンの厚みを変化させたホールオンリー素子を作製し、電流密度-電圧特性を測定・比較した。有機層としてイオン化ポテンシャルが異なるm-MTDATA、2-TNATA、Ir(ppy)_3、TPD、α-NPD、rubere、CBP、TRZ-2を用いた。有機層のイオン化ポテンシャルが三酸化モリブデンの仕事関数より小さいときに(m-MTDATA、2-TNATA、Ir(ppy)_3、TPD、α-NPD、rubereを用いたときに)、有機層から三酸化モリブデンへの電荷移動が生じ、有機層の空間電荷制限電流が観測されることを見出した。有機層から三酸化モリブデンへの電荷移動により生成された電子と正孔のペアが電界により分離することで有機層中に正孔が供給されるために(界面電荷生成)、ITO陽極層と有機層の界面の正孔注入障壁の影響が極限まで低下し、有機層の空間電荷制限電流が観測されたと考えられる。また、得られた電流密度-電圧特性を空間電荷制限電流の式を用いて解析することから有機層のキャリア移動度およびキャリア移動度の電界依存性を見積もることに成功した。一方で、有機層のイオン化ポテンシャルが三酸化モリブデンの仕事関数より大きいときには(CBP、TRZ-2を用いたとき)、界面電荷生成が生じないために有機層の空間電荷制限電流が観測されないことがわかった。厚みを厳密に制御した三酸化モリブデンを有機EL素子に用いることで素子の駆動電圧が減少し、耐久性が大幅に向上することがわかった。本研究の成果は有機半導体素子の高性能化や有機半導体薄膜のキャリア輸送機構を解明するために有意義であると考えられる。
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