本研究課題は、素子分離が容易かつ寄生容量低減が可能なSOI(Silicon On Insulator)基板の構造的な利点と、Geの高いキャリア移動度を活かした次世代半導体基板として期待されるGOI(Germanium On Insulator)あるいはSGOI(Silicon Germanium On Insulator)構造を、Si基板上で選択的かつ高品質に作製するための技術を開発することを目的とする。SiとGeの近赤外光に対する光吸収係数の違い、および融点の違いを利用した熱処理により、シリコン基板上で周囲を完全にシリコン酸化膜で覆われた薄膜アモルファスGeのみを融解・液相化し、一部に設けておいたシリコン基板との接触点から選択的に単結晶Ge層を基板平面方向にエピタキシャル成長させる。本年度は、SOI基板上にGe層を全面あるいはライン状に形成した後、SiO_2層でキャップしたSiO_2/Ge/Si/SiO_2試料に対して、ランプ加熱炉による急速加熱アニール処理あるいは波長1064nmのフェムト秒YAGレーザー照射を施して、GOI構造およびSGOI構造を作製した。作製した試料は、X線回折法、断面TEM観察、電子後方散乱回折法(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)により結晶性を評価した。その結果、フェムト秒パルスYAGレーザーを用いた溶融・結晶化では、アブレーションの抑制が課題となることがわかった。また、液相Geと固相Si界面でのSiとGeの相互拡散現象の制御が重要であるとの前年度の知見から、SiGe層は表面側では液相、Si層側では固相となるようSOI層厚とGe膜厚を設計することで、平坦かつ歪み緩和率100%の高Ge濃度SGOI構造の作製に成功した。GOI構造については、液相エピタキシャル成長による単結晶Ge層の形成を確認し、またバックゲートトランジスタを作製して電気特性評価を行い、固相結晶化した多結晶Ge層よりも大幅に優れたキャリア移動度を得た。
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