研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き,結晶中の原子の非調和熱振動解析のためのデータを収集するため,単結晶及び粉末試料を用いた放射光回折実験を行った.また,非調和解析のためのソフトウェアの整備が進行中である. (1)高エネルギー放射光回折実験 前年度整備した単結晶試料作成装置を用いて強誘電体チタン酸バリウム(強誘電相転移温度400K)の単結晶を直径約100μmの球形に成形し,SPring-8 BL02B1設置の大型湾曲IPカメラにより強誘電相転移温度の上下数点の温度で単結晶回折データを測定した.この際,35keV(波長0.35Å)という高エネルギー放射光を用いることにより空間分解能0.25Åという精密なデータを測定することに成功した.また,チタン酸バリウムやその他類似の結晶構造をもつ他のペロブスカイト型結晶を用い,放射光粉末回折実験を行った.単結晶回折データと組み合わせることにより,より高精度の解析を目指している.これら関連の研究について国際会議や日本物理学会等で発表した. (2)非調和熱振動解析ソフトウェアの整備 単結晶回折データと粉末回折データをもとに,結晶中の非調和熱振動を記述するパラメータを解析するためのソフトウェアの整備を開始した.整備及び解析は進行中であるが,非調和熱振動パラメータを取り入れた解析を行うことにより,調和熱振動解析では考察することができないチタン酸バリウムの強誘電相転移を特徴づける原子の熱的挙動が明らかになりつつある.
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