研究概要 |
金ナノ粒子を3次元格子状に配列させ、その物性測定を行った。3次元格子は以下の方法で作製した。金ナノ粒子の表面修飾子にはメルカプトコハク酸(MSA)を用い、水溶液内で分散性の良い金ナノ粒子を合成した。このナノ粒子を水中に分散させ、塩酸の滴下によりpHを約1に下げることで、金ナノ粒子表面を覆ったMSAの電離を抑え、ナノ粒子間の反発力を適度に弱めることによりナノ粒子を格子状に配列させた。こうして得られた金ナノ粒子格子は、ナノ粒子がhcp構造に配列していることが確認された。金ナノ粒子格子の電気的性質を調べるために、金ナノ粒子格子(hcp,a=4.1nm)を数ミクロンにまで成長させ、それらを多数集めて薄膜状にした。この試料の電気伝導を室温から低温(20K)にかけて四端子法により測定した。試料の電流電圧(I-V)特性は、室温から20Kの全ての領域で通常の金属と同様にオームの法則に従った。伝導度は約500S/cmと半導体領域であったが、温度の低下とともに伝導度が若干上昇するという金属的な温度変化を示した。次に、表面修飾子は変えずに金ナノ結晶の直径のみを変化させることでナノ粒子格子の格子定数aを3.1~4.7nmの範囲で変化させ、金ナノ粒子格子の誘電率を光学的に評価した。得られた誘電率の値は5~11となり、Maxwell-Garnet理論の予想値に近い値となった。本研究により、MSAで表面修飾された金ナノ粒子格子は次の特徴を有することが明らかになった:(1)電気伝導度の絶対値が半導体領域にありながら、温度変化は金属的である;(2)構成要素である金ナノ結晶のサイズを調節することで誘電率を設計できる。前者の特徴は、発熱による熱暴走を防ぐバラスト抵抗として有望である。後者の特徴は、電子回路の高集積化の際のゲート材料として期待できる。
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