電荷軌道秩序の実現した単結晶薄膜化にあたって、Nd_0.25Sr_1.75MnO_4薄膜合成の最適化をおこなった。 MnO_2面の異方的歪みが電荷軌道秩序にあたえる影響を調べるために、同じ結晶構造のLaSrAlO_4とLaSrGaO_4の(100)面基板に薄膜を成長させた。Nd_0.25Sr_1.75MnO_4の面内の格子定数はちょうど2つの基板の間にあるので、引っ張り歪みと圧縮歪みの両方の効果が調べられる。薄膜成長最適条件は基板温度850度、酸素圧1×10^-5Torrと高温低酸素圧であることがわかった。X線回折実験によって、LaSrAlO_4基板上の薄膜は圧縮歪み、LaSrGaO_4基板上の薄膜は引っ張り歪みが実現できていることを確認した。光学伝導度測定によって、それぞれの薄膜における電荷軌道秩序相の同定を試みた。(010)方向に偏光させて測定した光学伝導度スペクトルは、両方の基板上の薄膜において3〓4eV付近の酸素2pからMn4d軌道へのCT遷移が明瞭に観察でき、LaSrGaO_4基板上の薄膜にだけ0.8eV付近に大きな構造があった。この構造のピークは低温に向けて大きくなっていくことも確認した。この振る舞いは、Mnのe_g軌道の3z^2-r^2が一列に強磁性的に配列した軌道秩序状態のスペクトルに非常に近い。この電荷軌道秩序相は、バルク結晶の相においてx=0.80(Nd_0.20Sr_1.80MnO_4)で安定化している相であり結晶構造は正方晶に歪んでいる。今回合成した薄膜は基板により強制的に正方晶に歪んでいるため、強磁性的軌道秩序が相境界のx=0.75においても安定化していると予想できる。また、3z^2-r^2軌道の配列方向に結晶は伸びるので、LaSrGaO_4基板上には(010)方向に3z^2-r^2軌道が配列しているため(010)方向に偏光した光学スペクトルに構造が観察されたと結論づけた。 このようにNd_0.25Sr_1.75MnO_4薄膜の軌道秩序パターンを基板により制御することに成功しつつある。これは層状ペロブスカイト薄膜の異方的歪み効果を見出した初めての例である。
|