研究概要 |
本研究の目的は、独立駆動型4プローブ装置を用いて有機半導体や有機導体の内部の電気伝導度分布を4端子抵抗測定によって直接測定することである。本年度は有機分子を4プローブ装置内部で蒸着した試料に対して電気伝導測定を行い、有機物蒸着系に対して表面近傍の電気伝導度が直接測定可能であることを示した。また、今後の詳細な電気伝導測定において重要となる有機半導体内部の不純物の影響を最小限に抑えるために、昇華精製装置及び真空蒸着装置を作製した。1、2メチルプロペン終端シリコン(100)表面へF4-TCNQ(テトラフルオロテトラシアノキノジメタン)を4プローブ装置内部で真空蒸着し、4端子電気伝導測定を行った。探針間隔を5μmから300μmまで変化させて測定を行い、4端子抵抗が探針間隔に依存しなかったことから、この系ではシリコン基板内部を通る電流は少なく表面近傍の2次元電気伝導が支配的であることが明らかとなった。F4-TCNQ分子蒸着前との比較から、シリコン表面からアクセプタ分子であるF4-TCNQ分子への電荷移動によって表面電気伝導度が増加することが判明した。本研究のように有機物に対して独立駆動型の多探針プローブが用いられた研究例は少なく、電気伝導パスの直接測定という観点から新たな知見が得られると考えられる,2、長さ800mmのガラス管内に窒素ガスを流しながら最高400℃程度まで加熱可能な有機物昇華精製装置を作製した。3、精製した有機物を用いて有機薄膜を作製するために、オイルフリーの真空ポンプを用いた蒸着装置を作製した。試料加熱用のヒーター、蒸着レート測定用の膜厚計を有し、有機薄膜作製条件を精密に制御することが可能である。今後はペンタセンなどの有機半導体薄膜を昇華精製及び真空蒸着を用いて作製し、4プローブ装置で電気伝導度の探針配置依存性測定を行う予定である。
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