本年度は昨年度作製した有機物蒸着装置を用いて100nm熱酸化膜付きシリコン基板上に50nmのペンタセン薄膜試料を作製し、独立駆動型4探針装置によって電界効果トランジスタ特性(FET特性)の測定を行った。その結果、通常の抵抗測定とは異なり、ゲート電圧依存性を含むFET特性測定では探針-有機半導体間の接触抵抗が変化すると有機半導体のバックゲート(シリコン基板)に対するポテンシャルが変化してしまい、4端子測定においても接触抵抗の変化が測定結果に影響を与えてしまうため、再現性のある測定が不可能であることが判明した。そこで、電位測定探針の電位が一定になるようなフィードバックを電流探針にかけながら測定するという新たな測定手法を開発し、4探針装置において探針-有機半導体間の接触抵抗が変化しても再現性のあるFET特性測定が可能であることを初めて示した。この測定手法は4探針装置だけではなく、あらゆる4端子を用いたFET特性測定において電極-半導体間の接触抵抗の寄与を完全に取り除く手法として非常に有効であると考えられる。この手法を用いて50nmペンタセン薄膜のFET特性の探針配置依存性を測定し、結晶粒界の抵抗値は場所ごとに非常にばらつきが大きいことを発見した。また、結晶粒界の抵抗値が小さい領域を選んで測定を行うことで単一ドメインのFET特性の直接測定に成功し、そのときの移動度は0.25cm^2/(Vs)となった。以上のように、有機半導体試料の任意の位置のFET特性を測定することに成功した。しかし、測定手法開発のために装置改良が必要となったため、当初予定していた3次元マッピングに必要な精密なFET特性の探針配置依存性はまだ測定できていない。より詳細な測定をしていくことで今後可能にしていきたいと考えている。
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