金属超薄膜と半導体界面において水素原子がどのように吸着されるのか、銀(Ag)超薄膜とシリコン(Si)界面を用いて測定を行った。金属膜中との界面において水素がどのように作用するのかに関しては、界面を直接観測する手法がないためほとんど理解されていない。我々は昇温脱離法という水素の脱離が起きる温度を測定する事から、界面における水素吸着の解明を行っているが、水素はAg/Si界面に吸着する事が分かった。このことは、Si表面に存在するダングリングボンドがAg/Si界面において活性である可能性を示唆する。本研究では、(i).各水素曝露量に対する昇温脱離スペクトルを逐一測定する事から、Ag/Si7x7界面における水素吸着特性を理解する事、また、(ii).Siの原子配列が7x7ではなく√3x√3構造におけるAg/Si界面吸着に関し、7x7の界面との違いを実験的に明らかにする事の2点に関し異なる界面構造が異なる場合における水素吸着に関し調査した。 Ag/Si(111)7x7界面に関して、Si-Hとしての水素飽和吸着量は裸のSi表面におけるものと等しい事が分かった。さらに水素曝露量の増加に伴い、裸のSi表面では観測されることがない、新しいピークが低温側(~500K)に出現する事が分かった。このピークはAg/Siの界面ではなくAg薄膜中に吸着した水素に起因すると考えられ、Si表面近傍のAg膜中に存在する転移や欠陥にトラップされた水素に起因するのではないかと考えられる。 一方、ボロン(B)を高ドープしたSi基板を高温で加熱したAg/Si√3x√3-B界面においては、Si-Hの吸着はほとんど起きない事を見いだした。
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