研究課題
本研究は、量子ドット(QD)を埋め込んだフォトニック結晶導波路(PC-WG)の最適設計によって、QD内の励起キャリアの緩和時間制御を目指した。キャリア緩和時間制御の具体的な方法として、PC-WGモードにおける低群速度領域(高フォトン状態密度)の波長を量子ドットのバンドギャップエネルギーに共鳴もしくは非共鳴させることによって、緩和時間を短くもしくは長くすることを試みた。研究実施は2年計画で、2年目にあたるH22年度は、サンプルの光学測定を中心に研究を推進した。QD埋め込みPC-WGは、MBE法と電子線リソグラフィー、ドライエッチングにより作製した。その際、PCの格子定数を系統的に変化させて導波路を作製し、そのサンプルをPL測定と2波長ヘテロダインポンプ・プローブ法により光学的に評価した。まず、導波路内のPL測定によって、埋め込まれたQDからの不均一発光強度の一部が強められていることが確かめられた。これは、パーセル効果によって低群速度領域におけるQDの発光が増強されたためであり、増強された発光波長はPCの格子定数変化とともにシフトした。この結果はシミュレーション計算結果ともよく一致し、QDのバンドギャップエネルギーと低群速度領域波長の共鳴、非共鳴状態をPCの格子定数で精度よく制御できることを示している。また、ポンプ・プローブ法によるQD内のキャリア緩和時間の測定結果から、QDの励起準位間エネルギーが低群速度領域波長と共鳴した際、量子ドット内のキャリア緩和が速くなる傾向を見出した。これは、本研究の目的であるQD内励起キャリアの緩和速度制御の可能性が示唆される結果であり、QDの強い光非線形性を利用した全光型超高速繰り返しスイッチ素子への応用が期待される。
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Journal of Nonlinear Optical Physics & Materials
巻: 19 ページ: 543-550
Proc.of Photonics Global Conference (PGC) 2010
ページ: 1-5