金属粒子や先鋭化した金属探針の突端に光を照射すると、局所プラズモンが励起されることが知られている。本研究では、局所プラズモン共鳴の持つ電場増強効果を電子線電界放出に応用することで、新たな高性能電子源システムを開発することを目的としている。研究期間全体では、以下の3点を到達目標としている。 (1) 電子源突端の共鳴周波数に一致する光でプラズモンを励起した場合、引出電圧がどれだけ下げられるか。究極的には、数V程度の低電圧での動作が可能であるか。 (2) 引き出し電圧を一定に保った場合、光制御による電子線のオン・オフが可能であるか。 (3) プラズモン共鳴により低電圧で電子源を駆動すると、絶縁膜の寿命がどれだけ向上するか。 22年度の研究では、(1)の一部と(2)に取り組んだ。電子源には、電解研磨したタングステン線に金薄膜をスパッタ成膜したものを用いた。電子源の先端直径は100~200nm程度であり、この構造に対するプラズモン共鳴波長を数値計算によって求めた。この波長の光を照射しながら電界放出実験を行ったところ、非照射の場合に比べ引出電圧の14%低下を達成した。また、(2)に関し、入射光を変調して照射したところ、光変調に応じた電子線放出の変調が見られた。このことから、電子線放出の光制御を達成したと言える。非照射時と照射時の電流比は最大23であった。この成果をもとにして、23年度には微小電子源アレイの製作に取り組み、低電圧での動作と絶縁膜寿命の向上を達成する。
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