研究課題
横波型弾性表面波は液体中に音波を漏洩せずに伝搬する性質がある。これを用いれば、液体の電気的特性(誘電率や導電率)の変化を検出できると考える。これまで横波型表面波の励振は単結晶基板でしか達成されておらず、任意の基板に作製できる「横波型表面波を励振する薄膜」は実現されていない。本研究は石英ガラス基板上にエネルギー粒子照射成膜によりc軸が基板面に平行に揃ったZnO圧電膜(c軸平行配向膜)を成長させた。この膜の上に表面波励振用のくし型電極(IDT)作製することで、レイリー型表面波を含まない横波型表面波だけの高効率励振を実現した。さらに、ネットワークアナライザを用いてIDT電極の放射アドミタンスから電気機械結合係数を測定した。その結果、単結晶の物理定数を用いて計算した電気機械結合係数の約60%程度の値を示すことがわかった。また理論予想と同様の電気機械結合係数の結晶方位による異方性も確認することができた。次に作製した送受波IDT間の表面波伝搬路にシリコーンゴムを用いてプールを構築し液体計測センサを作製した。標準導電率液体を用いてセンサ特性を検証した結果、実施計画どおり表面波速度から導電率変化をセンシングすることに成功した。およそ0.05~1S/mの範囲において動作を確認することができ、実測の電気機械結合係数から予想される理論感度ともおよそ一致した。さらに本研究では、円柱状の石英試料の曲面においてもc軸平行配向膜を形成に成功したため、さまざまな基板や物体上に液体用導電率センサを作製できることを示している。例えばシリコン集積回路からなるセンサ駆動回路とセンサのワンチップ化や、シリコンMEMSおよびバイオMEMSとの融合が期待される。
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