中性子スピンエコーは試料のダイナミクスを測定できる準弾性散乱分光装置である。その一種である共鳴スピンエコーでは共鳴スピンフリッパーの振動磁場の周波数が高いほど測定の分解能が向上する。MIEZE型共鳴スピンエコーは中性子の時間的粗密波を測定するが、パルス中性子源では中性子波長も検出時刻に依存する。研究代表者らはJ-PARC BL05において、各デバイスを中性子発生パルスに同期させ、パルス中性子源からの白色中性子に対応したMIEZE型共鳴スピンエコーを構築した。実効最高周波数は600kHzに到達し、これは世界最高分解能を達成している。また、高周波共鳴スピンエコー装置では、中性子飛行経路の広がりによる位相差の分散が測定可視度を低減させてしまうため、これを補償する「位相補正デバイス」が必要になる。曲面中性子反射鏡による位相補正が従来から提案されていたが、研究代表者は実際の体系に基づいた数値計算を行い、その実現可能性について議論した。これらに基づいて、研究代表者らはJ-PARCへ共鳴スピンエコー装置の設置提案を行った。実機の詳細な設計を進めている。また、従来の中性子小角散乱装置へのMIEZEオプションの設置の可能性を検討し、実際にJRRT-3の小角散乱装置SANS-J2において実験を開始している。
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