研究課題
本研究では、世界経済の現状把握と体制設計に関する知識獲得を行うための網羅的データ収集・計算システム・数理的方法論・フィールド研究のバランスの取れた醸造を目的とした。そして、原因と結果を結びつけた外国為替市場のエージェントモデルと網羅的な高精度データを連携させ、現状理解の計算手法と方法論の獲得を目指した。本年度は実施計画に基づき(1)外国為替市場データの網羅的収集と連続分析(2)並列計算技術を用いた分析ソフトウエアの開発(3)外国為替市場関係者への聞き取り調査を行った。前年度に建設した並列計算システム上に収集した高解像度外国為替データ(2007年5月~2011年1月)を設置し、すでに手法開発が完了していたエージェント間情報伝達構造を計量するための分析方法(a)相関関数・ゆらぎのスケーリング関係、(b)インパルス的集中行動の市場全体における同調、(c)シェアに対する規格化エントロピー・相互エントロピー(Jensen-Shannon divergence)により、期間中の並列計算による連続分析を実施した。提案手法を用いた分析の結果、世界同時金融危機は2008年7月頃から始まり急激な円クロス全面高を伴いながらポジションの同時崩壊が発生していたことが判明した。しかしながら、2009年2月頃には多くの国において円ポジションの清算はほぼ終わり、銀行システム内に大量の不良債権を発生させつつも、外国為替市場の価格変動はほぼ正常化していたことが判明した。また、2009年8月頃を境に、市場構造の大きな変化が注文・取引両方で確認された。更に、2010年4月から始まった欧州ユーロの不安定化局面において、市場参加者の行動はこれまでに観測されていなかった状況を呈していた。この市場参加者の集団行動の変化は2010年5月中旬頃には、収束し落ち着きを取り戻していたことが分かった。
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Agent-Based in Economic and Social Systems VI : Post-Proceedings of The AESCE International Workship 2009, Agent-Based Social Systems 8, Springer (Tokyo), Eds.By S.-H.Chen et al.
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