研究概要 |
本研究は,ペタスケールの演算性能を持つ大型計算機システムに適した数値解析手法として,制約条件付きバランシング領域分割法(BDDC法)に基づく並列有限要素法を研究開発することで,構造物健全性評価における大規模構造解析シミュレーションの期間短縮と高精度化を同時に実現するものであり,平成21年度には以下の成果が得られた.事前調査済みであったBDDC法アルゴリズムについて,計算機への実装に適した行列形式による書き下しを行った.これにより,従来手法であるBDD法に比べて線形代数演算の性能がより重要となることが判明したため,並列計算機実装の基礎となる階層型領域分割法の次世代計算機向け並列実装の最適化を行った.特に,CPU内に複数の演算コアを持つメニーコアCPUにおけるコア間並列化方法として,行列非記憶方式(Matrix Storage-Free)に基づく領域分割法実装を提案し,Intel Core i7などの4コアCPUに対して3倍以上の並列効率を出すことに成功した.またBDDC法はBDD法と同様にコース問題の計算コストが重要となるため,その予備調査としてBDD法におけるコース問題演算性能の定量的評価を行い,それに基づく最適領域分割数の提案を行った.これにより,超並列計算機上において計算時間を準最適化するパラメータ設定を容易にした.実用問題への応用準備としては,BDD法の鈍化き裂付きモデルの大変形弾塑性解析を実施し,塑性の進行に伴って収束性の改善が得られにくくなることが分かった.これはBDDC法においても同様の傾向となることが推定できたため,塑性が大きく進行したときの条件数悪化を改善するための手法開発が不可欠であることが得られた.
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