研究概要 |
本研究は,ペタスケールの演算性能を持つ大型計算機システムに適した数値解析手法として,制約条件付きバランシング領域分割法(BDDC法)に基づく並列有限要素法を研究開発することで,構造物健全性評価における大規模構造解析シミュレーションの期間短縮と高精度化を同時に実現するものであり,平成22年度には以下の成果が得られた. 平成21年度に行列形式での書き下しを行ったBDDC法を並列計算機上に実装することに成功した.簡易形状モデルを用いた収束性評価により,従来手法であるBDD法と比較して収束性の向上を得ることができた.しかし,各領域において制約条件を課すprimal自由度の選択によっては収束性が悪化することが分かった,また,大規模有限要素解析で重要となるDelaunay四面体分割とMETIS領域分割を組み合わせたモデルに対しては,収束性が大きく悪化した.これは,文献調査によって,primal自由度の選択方法によって対応できることが分かったため,BDD法とBDDC法の両方とも開発を継続していく. 次に,ペタコンの次の世代における計算機アーキテクチャについて調査し,メニーコアCPUとGPUなどの拡張演算装置のハイブリッド型が主流となることが分かった.よって,GPU向けの並列有限要素法の実装を行った.BDD法における係数行列ベクトル積で必要となるローカルシュアコンプリメント行列を陽に作成するアルゴリズムを提案し,CUBLASライブラリを用いることで,プログラムの大幅な改良なくGPUへの移植を実現し,約100万自由度規模解析において単一GPUで単一CPUと比較して2倍の高速化に成功した. また,高圧圧力容器への応用に向けて,FRP材料の引張り試験を数値解析で行い,繊維強化軸と荷重方向の関係でBDD法の反復回数に2倍程度の差が生じる結果が得られ,アルゴリズムを改良する必要があることが分かった.
|