研究概要 |
本研究は,ペタスケールの演算性能を持つ大型計算機システムに適した数値解析手法として,制約条件付きバランシング領域分割法(BDDC法)に基づく並列有限要素法を研究開発することで,構造物健全性評価における大規模構造解析シミュレーションの期間短縮と高精度化を同時に実現するものであり,平成23年度には以下の成果が得られた. 平成22年度までに構築したBDDC法について,規則的な領域分割問題に比べて収束性が大きく悪化するjagged interface問題の収束性評価を行った.これにより,primal自由度を領域間境界面の重心などに追加することで一定の改善効果を得ることに成功した.しかし,根本的な改善とは言えず'四面体要素モデルが多く用いられる実問題に対しては,総計算時間の観点からもBDD法の方が優れていることが分かった. 次に,BDD法の京コンピュータに実装し,性能評価を行った.マルチコアCPUに対する並列処理として,BDD法の領域内部自由度問題,Neumann-Neumann前処理,及びCoarse Grid行列作成で現れる部分領域方向に対するループ処理をOpenMPでスレッド並列化し,ループの静的ブロック分割と動的サイクリック分割を適切に使い分けることで,効率的なハイブリッド並列化に成功した.また,大規模疎行列向け直接法ライブラリを調査し,MUMPSライブラリの有効性が確認されたため,Coarse Grid修正に適用した.これにより,従来手法に比べて計算時間の大幅短縮に成功した.結果として,京コンピュータ3,000ノード以上を用いて2億自由度規模大規模プラントモデルの静解析が約1分で完了するなど,構造物健全性評価に有効なシステムの構築に成功した.
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