研究概要 |
異種材料ナノスケール界面の密着特性は,ミクロな界面構造と極めて相関が強い。そこで、密着現象を理解するためには、材料内において、応力により駆動する熱活性化過程の詳細原子プロセスを把握する必要がある。しかしながら,分子動力学法(MD)を代表とする分子計算には「時間スケールの制約」という固有の弱点があり,結果、従来MDでは、興味ある物理現象の知見を正確に得ることが困難であった。そこで、本年度は長時間スケール解析が可能な加速化分子動力学計算法の開発を実施した。ここでは、Hyperdynamicsと呼ばれる加速化理論に以下の2点のコンセプトを新たに導入した。まず、原子が集団的に運動するような遷移状態をもつ現象に対して適用できるよう、原子ひずみ量を変数としたバイアスポテンシャル構築法を提案した。つづいて、バイアスポテンシャルに可変性を付加し、最大の加速化率を導出できるようなアルゴリズムを提案した。本開発手法の妥当性を示すため、ナノピラー形状をしたCuの圧縮シミュレーションを実施し、表面からの転位生成プロセスに適用した。ひずみ加速化法により、転位生成プロセスに対して、最大10^11もの加速化が達成でき、ほぼ実験スケールに近い原子解像度でのダイナミクスシミュレーションが実行できた。本シミュレーションによって、表面からの転位生成が幅広い温度領域においてアレニウス型の振る舞いをしていることを明らかとした。さらに、得られた転位生成頻度データを用いて、活性化エンタルピー・活性化エントロピー、活性化体積をダイナミクスシミュレーションから算出することが可能となった。
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