本研究の目的は、高温での熱応力破壊に対するき裂治癒の有効性を調査することであり、平成21年度は以下の2点について、研究を実施した。第一に、セラミックスの高温における熱衝撃破壊挙動を評価する試験装置を開発した。また、第二に、熱衝撃破壊の発生する冷却速度の臨界条件に及ぼすき裂治癒効果を調査した。2点の研究の結果、以下の知見を得た。 赤外線集光加熱炉と不活性ガス吹きつけによる急冷機構を組み合わせることで、ガス急冷型熱衝撃試験装置を開発した。本装置を用いることで、アルミナ-炭化ケイ素複合材の40mm角試験片を1100℃付近で熱衝撃破壊を引き起こすことが可能であった。さらに、本装置は、冷却時の赤外線ランプの発光量および冷却ガスの流速を制御することで、試験片に生じる冷却速度を制御することが可能であることを実証した。 き裂治癒を施したアルミナ-炭化ケイ素複合材に数種の冷却速度で急速冷却し、熱衝撃破壊が生じる臨界冷却速度を評価した。1300℃からの冷却における臨界冷却速度は、6.47K/sであった。これに対し、同条件で試験した予き裂材の臨界冷却速度は、5.02K/sであった。さらに、き裂治癒材の破壊起点は、き裂治癒部ではなかった。このことから、き裂治癒部の熱衝撃耐性は、得られた実験値に比べざらに大きいことが予想される。以上の結果より、き裂治癒処理を施すことで、熱衝撃破壊に対する抵抗値を向上できることが分った。
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