研究概要 |
平成21年度には,1100℃付近で生じる熱衝撃破壊が発生する熱応力が,き裂材およびき裂治癒材においてそれぞれ350MPaおよび450MPaであり,き裂治癒処理によって熱衝撃破壊抵抗が改善することを明らかとした.平成22年度はこの知見を生かし,繰り返しの熱衝撃破壊に対してき裂治癒処理を施したセラミックスが有する耐性を評価した. まず,前年度得られたき裂材の熱衝撃破壊の臨界値以下に発生する熱応力を自在に制御可能となるように,実験装置の改良を行った.具体的には,試験片寸法を30mm角試験片として,それに併せ周辺治具のサイズも変更を行った.また,併せて試験片四隅の外方に石英ガラス管を4本配置し,そのガラス管より試料に室温のHeガスを吹き付けることを可能とした.試料には前年度と同様にアルミナに18vol%の炭化ケイ素を分散複合した焼結体を用いた.破壊起点を規定するために,最も大きな熱応力が発生する4つの試験片側面中央には,インデンテーション法により表面長さ0.1mmの半楕円き裂を導入した.この試験片を1300℃で1時間乾燥空気中もしくはArガス雰囲気中で試料全体が熱平衡に達するまで保持した.この時に,乾燥空気中ではき裂表面の炭化ケイ素が高温酸化しき裂治癒を起こし,Ar雰囲気中では,予き裂のまま残存する.引き続き,発生する最大の熱応力がおおよそ300MPaとなるように,冷却ガス流速およびランプ出力を制御して,800℃まで冷却を行った.その後,1300℃での高温保持,急冷を施すことによって,繰り返しの熱衝撃を試料に加え,最終破断に至るまでの回数を測定した.
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