研究概要 |
マイクロ/ナノ構造物の基本要素である金属薄膜を対象として原子輸送によるナノスケールでの変形・破壊現象をその場観察により定量的に評価する手法の開発を目的としている.多結晶体における大域的な原子の輸送径路の把握を目的として,全視野変位計測手法の一つであるデジタル画像相関法を用いて原子輸送により生じる結晶粒の変位場を計測する.続いて,数値解析を用いて局所の応力・変形と表面欠陥発生の関係について定量化を試みた.評価対象として,代表的な低融点金属薄膜である錫めっき薄膜を使用している.原子輸送の加速および欠陥発生箇所の制御を目的として微小圧子を用いたインデンテーション試験を実施して,局所的な残留応力により原子輸送を加速させて評価した.今年度得られた成果として,1. Agを添加しためっきと純Snめっきについてウィスカ発生評価を実施した.Ag添加によりウィスカ発生が抑制されていることを確認するとともに,微細構造や機械的特性について評価した.結晶サイズの変化などによってウィスカ発生が抑制されているだけでなく,Agの移動によって原子輸送が抑制されていることが解明された.この結果について,次年度開発したモニタリングシステムで検証することを検討している.2. 微視構造を考慮したデジタル画像相関法による変形評価システムおよび有限要素解析による応力評価システムを開発した.3. 次年度構築予定のモニタリングシステムの設計を行った.2. で得られた成果を,次年度購入する表面解析装置と組み合わせることによるデジタルモニタリングの妥当性を数値的に検証するとともに,簡易モデルをベースとして予知のための数値基準を設定した.
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