研究概要 |
前年度に引き続き,デジタルモニタリングに資する原子輸送により生じる欠陥の発生・成長の加速因子についての検討を行った.高温高湿環境で晒された試験片を用いて,ウィスカ発生評価を行うとともに,試験後に曲げ負荷や電流を流すことによる加速の影響について検証した.ウィスカは,腐食環境では局所に表面酸化が生じた箇所付近から発生するが,曲げ試験では表面全体からウィスカが発生していた.また,曲げ試験により急速に発生するウィスカは腐食環境にされされたサンプルの方が短い傾向にあることが確認できた.これは,ウィスカが応力勾配により生じるものであることを示唆しており,従来の予想されている成長モデルと一致している.試験後に通電負荷を与えたサンプルからは特異的にウィスカが観察される場合があることを確認した.これは,局所的に生じた腐食性生物の絶縁性により電流の流れが乱れたために付近で応力勾配場が形成されたことによるものと推定される.得られた知見より,高温高湿環境で局所的な腐食が生成されたサンプルを対象に通電試験を実施することでデジタルモニタリングが可能であることを見出した.これらの結果を参考にして,購入した原子間力顕微鏡とマイクロ通電プローブを組み合わせたモニタリングシステムを構築した.しかし,原子間力顕微鏡では表面の酸化の状況をモニタリングすることは難しいためCCDカメラ等のデジタル画像と組み合わせたシステムの開発が必要になると考えられる.
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