| 研究概要 |
本研究課題では,圧延方向に長く伸長したマルテンサイトが層状に分布した特徴的なミクロ組織を有する鋼材を対象とし,ミクロ組織の形成過程で生じる微視的残留応力と,その疲労き裂進展特性への影響を実験および数値シミュレーションにより解明することを目的とする.
本年度は,すでに基本部分の構築が完了している微視的残留応力の形成過程の数値シミュレーション手法の定量性を向上させるために不可欠な,ミクロ組織の材料特性の測定および推定に関連して,以下の2項目を実施した.
(1) インデンテーション試験による強度特性の直接測定
インデンテーション装置によりミクロ組織レベルでの強度特性を測定し,その結果を微視的残留応力の予測のための数値シミュレーションに反映させた.
(2) EPMAマッピングによる化学組成分布測定結果に基づく強度特性および相変態特性の推定
EPMAマッピングにより,ミクロ組織レベルでの化学組成分布を測定し,その結果に基づいて,強度特性およびその温度依存性や相変態特性を,材料データベースなどを援用しながら推定した.
以上の2項目により推定および決定した強度特性や相変態特性を微視的残留応力の数値シミュレーションに導入することで,数値解析精度が向上し,実験によって確認した疲労き裂進展特性に及ぼす微視的残留応力の影響を,より定量的に説明することができた.
本年度の研究において,微視的残留応力数値シミュレーション手法の定量性を向上させることができた結果,次年度,微視的残留応力が存在する下でのき裂先端の応力・ひずみ場の形成挙動の解明へと展開することが可能となった.
さらに,項目(1)の展開として,次年度に実施予定のインデンテーション法による微視的残留応力推定に関する基礎検討にも着手し,適用可能であるという見通しを得た.
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