本研究では超格子の界面弾性と機能の関係を解明することを目的としている。極短パルスレーザーとX線反射率法を駆使して超格子の面外弾性定数を計測し、X線構造解析の結果と比較することで界面弾性と界面構造の関係を実験によって明らかにする。さちに、弾性定数と機能の関係を系統的に調べることで、機能の発現に対する界面弾性の寄与を解明する。初年度は超格子の成膜条件とレーザー音響フォノン法による弾性定数測定の最適化を目的としている。 最初に、Fe/Pt超格子を室温で成膜し、X線反射率法を用いて界面構造を評価することで最適な成膜条件を決定した。さらに、Fe/Pt超格子に対して成膜後に熱処理を施すことで界面構造の制御を試みた。その結果、熱処理温度の上昇にともないFeとPtの界面付近にFePt合金が形成され、500℃の熱処理によって全体がFePt合金になることが確認され、熱処理によって界面構造を制御することができた。 成膜条件の決定に続いて、弾性定数の計測を行った。室温で成膜した超格子に対してレーザー音響フォノン法による計測を行い、精度よく弾性定数を決定することのできる測定条件を決定した。その後、熱処理を施した試料についても弾性定数を計測した。その結果、室温で成膜されたFe/Pt超格子の弾性定数はバルクのFeとPtの弾性定数から推測される値よりも小さく、熱処理温度が高くなるにつれて弾性定数はバルク値に近づくことが明らかになった。これは室温で成膜されたFe/Pt超格子には界面に不完全結合部が存在しているが、熱処理によってこれらが減少し、さらにはFePt合金が形成されることが原因であると考えられ、Fe/Pt超格子の界面弾性と構造に強い相間があることを見出した。
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