研究概要 |
ポリマー中にナノ粒子を分散させたナノコンポジットの開発には、要求された機械的特性・熱的特性を満足するためにフィラー(介在物)種の機械的特性を積極的に制御し、複合化による強化機構を定量的に制御することが求められる。本研究は、ナノコンずジットを構成する母相、介在物ならびにその界面領域の力学特性を記述・理解するための、マルチスケール手法に基づくモデリングの枠組みを構築することを目的とする。本年度は、昨年度までに整備を進めた原子・分子レベル解析コードおよびメゾスケール解析コードを用いて、以下の2項目に対して具体的な解析例を行い、その妥当性を評価した。 1.昨年度までに整備した粒子描像による反応モデリング手法に基づいて、種々の母相中の異種原子・粒子の拡散挙動を評価した。特に軽量元素の運動や長時間スケールの拡散過程が支配的となる系に対して、拡散定数および活性化エネルギー等を原子レベルで定量的に評価し、当該手法の有効性を評価した。また、低頻度事象に対する効率的な解析を実施するために原子シミュレーションの加速法に関する検討を行った。 2.昨年度までに整備した非線形弾性大変形モデリング手法に基づいて、種々の無機結晶系(C, AI, Fe, Mg等)を対象として、第一原理密度汎関数法計算に基づく非線形弾性構成式の構築を行った。また、本構成式を業界標準的な有限要素法コードにソフトウェア実装することで、一般的な応力・境界条件の下での介在物材料の変形解析を実現し、その有効性を評価した。その結果、第一原理計算と同程度の精度の応力-ひずみ応答が低い計算負荷で獲得できることを確認した。
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