研究概要 |
本研究では,エネルギー負荷の小さいソフトマテリアルの強度を高め,構造部材として安全かつ有効に使用するために,材料の力学特性を把握・予測することを目的としている.特に,高分子材料などの一部のソフトマテリアルが不均一変形を生じやすいことから,材料が試験中に均一変形することを仮定して設定されたハードマテリアルと同様な力学試験法では,ソフトマテリアルに特有の不均一変形の発展を忠実に把握することが困難となる.そのために本研究では,材料の不均一変形を定性・定量的に評価する新たな試験手法を用いた実験的アプローチと,2変数均質化法に基づいた微視・巨視領域の不均一変形の相互作用を評価する数値的アプローチの両者を通じて,材料の不均一変形の発展を忠実に表現可能な構成式の定式化を目指す. 本年度は,まず,評価手法の確立に向け,微小ひずみから大変形に至るまでの変形履歴を高精度に評価できるように改良したデジタル画像相関法を開発し,実際に高密度ポリエチレン(HDPE)とポリプロピレン(PP)の単軸引張時の局所変形の定量評価を実施した.その結果,一般的な高分子材料の引張試験時に見られるくびれの生成,成長および伝ぱ過程における局所ひずみの発展を定量的に評価することが可能となった.また,HDPEよりも高い強度を有するPPの方が,HDPEに比べて伝ぱの発生が早い変形段階で生じ,その後の伝ぱ速度が大きくなることを示した.さらに,均質化法を用いた有限要素解析により,微視・巨視領域の不均一変形を並行に評価し,材料の巨視的な不均一変形場とその進展が微視領域のひずみ分布や変形履歴と密接に関連していることを示した. 以上,本年度に得られた研究成果は,材料の変形場を数理的にモデル化する上で,実験的,かつ力学的な根拠を与えるものであり,今後の局所応力場の評価を含めた材料変形場進展の確立に向け,重要な情報となりうる.
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