研究概要 |
本研究は,従来のマグネシウム合金と比べて著しく高い強度を示すことから,近年注目を集めている長周期積層型マグネシウム合金の変形機構を,実験観察と数値解析により明らかにすることを目的としている.平成21年度は押出材を対象とした実験観察と最密六方晶(HCP)構造のための数値解析手法の構築を行った.具体的には,まず実験的にHCP相と長周期(LPSO)相の擬似単相鋳造材を,押出温度および押出比を変化させて押出加工を施し,構成相や結晶粒径等の微視構造が力学特性に及ぼす影響を評価した.実施した試験は,室温下における引張試験,圧縮試験,負荷除荷試験,繰返負荷試験等であり,異方性変形挙動を詳細に把握した.さらに材料試験前後の組織を光学顕微鏡と電子顕微鏡を用いて観察することにより,各変形機構が異方性変形挙動に及ぼす影響についても検討した.一方,数値解析手法の構築としては,長周期積層型マグネシウム合金のための数値解析手法の基礎として,HCP構造のための結晶塑性有限要素解析手法を構築した.本解析手法は,HCP構造の非等価なすべり系および双晶変形を考慮しており,各変形機構の臨界分解せん断応力(CRSS)を設定することにより,従来のHCP相とLPSO相の両方を表現可能なものとした.さらに,未だにその取扱いが確立していない双晶回転も含めた手法とすることにより,HCP構造を持つ金属材料の微視組織発展を精密に表現可能なフレームワークを構築した.構築した手法の妥当性を検証するため,純マグネシウムおよび商用マグネシウム合金AZ31を対象として,押出解析および異方性変形解析を行い,それぞれ同条件の実験観察結果と比較し,巨視的変形挙動と微視組織発展のどちらも定性的な記述が可能であることを確認した.
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