研究概要 |
長周期積層構造(LPSO)型マグネシウム合金は,従来のマグネシウム合金と比べて著しく高い強度を示すことから,輸送機器をはじめとする機械構造物の強度部材としての適用が期待されている.しかしながらその強度発現機構は十分に解明されておらず,信頼性向上のためにも早急な解明が望まれている.そこで本研究では,LPSO型マグネシウム合金の中でも強度と延性のバランスが良いことから特に注目を集めているMg-Zn-Y系合金を対象として,強度に及ぼす長周期相の影響を実験観察と数値解析の両面から定量的に評価した.また,LPSO相における強化機構の一つとして注目されているキンク帯の形成機構を調査するための数値的手法を構築した. 平成22年度はLPSO相の体積分率が異なるMg-Zn-Y系合金を用いて,押出条件が室温および高温下における機械的特性と集合組織を含む組織変化に及ぼす影響を材料試験と微視的観察により明らかにした.さらに平成21年度までに構築した最密六方晶のための結晶塑性有限要素解析手法を二相合金のためのものに拡張し,拡張した手法を用いて組織観察結果に基づく二相合金モデルを作成し,LPSO相の体積分率の異なるMg-Zn-Y系合金の単軸負荷解析を行った.その結果,LPSO相体積分率の増加に伴う強度上昇を定量的に再現することができた.また,LPSO相の強化機構の一つと考えられているキンク帯の形成機構を検討するため,双晶が抑制された最密六方晶の圧縮負荷解析を行った.その結果,底面に対する負荷方向に依存して粒界を介した相互拘束の結果として,底面に垂直な方向に変形帯が生ずることがわかった.この変形帯は構造的にキンク帯と等価なものであることから,本解析手法を用いてキンク帯形成過程を数値的に評価可能であることを示すことができた.
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