研究概要 |
本年度得られた実績の主な内容を以下に示す. 【1】EBSD法を用いたナノレベル微小領域のひずみ測定用SEM内引張試験機の設計 本研究では,ひずみ測定をEBSD法で行うため,その測定感度等を実験的に検証する必要がある.そこで,高真空用SEM内引張試験機の設計を行った.計画当初は,変位量のあまり出ない真空用圧電素子をアクチュエータに使用する予定であったが,弾塑性変形過程に於ける高ひずみの評価に対応できないため,ある程度の変位出力が可能な高真空用モーターにより負荷を与えることとした.SEM内外の信号の受け渡しは,特注のフランジを設計・製作した. 【2】ナノ空間分解能での2次元ひずみマッピング測定 EBSD法を用いたひずみ評価の一つとして,EBSD法により測定される結晶方位(OIM)パラメーターの変化から塑性ひずみの評価の可能性について検討した.対象は多結晶のニッケル試験片とし,熱処理を施すことで結晶粒を粗大化し,結晶粒内のひずみ変化を捉えやすくした.またひずみの導入には,単純引張試験で行った.0.2%耐力(初期降伏)まではSEM画像及びOIMデータでひずみの変化を捉えることが出来なかったため,現在検討している菊池パターンの変化によるひずみ評価が有効であると考えられる.一方塑性ひずみが大きくなる引張強さ付近ならびに破断前後では,SEM画像にすべりが観察され,IQ mapと対応することが分かった.塑性ひずみの増加に伴いGOSとGAMに変化が現れ,中でもKAMは粒界近傍に大きな変化がみられた.よって,大きいひずみ量に対しては,菊池パターンから直接ではなく,結晶方位パラメーターによりひずみを評価できる可能性を示した.
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