研究概要 |
本年度得られた実績の主な内容を以下に示す. 【1】EBSD法を用いた微小領域のひずみ測定で使用するひずみ負荷装置の製作とシミュレーション ひずみ測定をEBSD法で観察される菊池パターンで直接行うが,シリコン単結晶体に負荷を与える場合,引張試験片への加工が困難なため,短冊状で負荷できる高真空用SEM内4点曲げ試験装置を製作した。さらに,シリコンの結晶方位に対する剛性マトリックスを計算し,有限要素解析により応力場,ひずみ場を算出した.同時に,菊池パターンと格子面の相関関係を明らかにし,ひずみ測定時の関心領域(ROI)を決定した. 【2】ナノ空間分での2次元ひずみマッピング測定 EBSD法を用いたひずみ評価の一つとして,EBSD法により測定される結晶方位(OIM:IPF,IQ,KAM,GAM,GOS,GROD)データの変化から塑性ひずみの評価の可能性について検討した.対象は多結晶銅で,熱処理により結晶粒を粗大化することで結晶粒内のひずみ変化を捉えやすくした.昨年度のニッケルと同様にすべり変形をしやすい銅においても,耐力(初期降伏)まではSEM画像及びOIMデータの中ではでひずみの変化を捉えることが出来なかった.従って,現在検討している菊池パターンのバンド幅ならびに晶帯軸の変化によるひずみ評価が有効であると考えられる.しかし,シリコン半導体に導入されるような非常に大きなひずみでないと検出されない可能性があることも分かった.一方塑性ひずみは,耐力以上になると各パラメーターが変化した.中でも,IQ mapが最も塑性変形に敏感に変化し,塑性ひずみの変化と最も対応したのはGROD mapの変化であった.結晶方位回転を伴うような大きな塑性ひずみに対しては,菊池パターンから直接ではなく,結晶方位パラメーターによりひずみを評価できる可能性を示した.
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