研究概要 |
EBSD法を用いたナノ空間分解能での2次元ならびに3次元ひずみスキャニング技術として以下の成果が得られた. 1.EBSD法を用いた弾性ひずみ評価法 製作した高真空用SEM内4点曲げ試験装置を用いてSiのひずみ評価を行った.得られた菊池パターンに対し,エッジの鮮鋭化,フーリエ変換,ハイパスフィルター,逆フーリエ変換の画像処理を行うことで,ひずみ負荷前後のバンド幅変化を捉えることに成功した.ひずみ分解能を上げるため,スクリーンの位置を試料から遠くすると画像の劣化が著しく,ひずみの同定が困難であった.しかしスクリーン距離30mmで1000μst程度のバンド幅変化を捉えることができたため,高ひずみのひずみ場を同定できる可能性を示した.晶帯軸の変化も有効なパラメーターであると考えられる. 2.EBSD法を用いた塑性ひずみ評価法 EBSD法で測定される結晶方位(OIM:IPF,IQ,KAM,GAM,GOS,GROD)データを用いた塑性ひずみ評価を検討した.対象は多結晶ニッケルとした.昨年度の多結晶銅と同様に初期降伏まではひずみ変化を捉えることは出来なかった.この領域では,項目1のバンド幅では難しいものの晶帯軸の変化によるひずみ評価が有効と考えられる.耐力以上になると各パラメーターが変化した.中でも,IQ mapが塑性変形に最も敏感に変化したが定量評価に向かず,パラメーターとして不十分であった.塑性ひずみを表すパラメーターとしては,ひずみに対して線形的に変化したGRODが有効であった.この結果は多結晶銅と同じであり,物理的意味としても妥当であった.次に,塑性ひずみの3次元的評価のため,数100μm間隔のシリアルセクショニングとEBSD評価を繰返す3次元的なひずみ評価技術を開発した.結晶方位回転は3次元的に生じており,内部の塑性ひずみを3次元的に捉えることができた.
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