研究概要 |
胎児を包む羊膜は3層の構造を持つ膜であり,羊膜には血管成分がないために拒絶反応が起こりにくいとされている.そのため,羊膜は再生医療における細胞培養の基質として使用されるなど,その有用性は医療の様々な分野で注目されている.羊膜は-80℃の無菌状態で凍結保存されるが,この工程では羊膜の完全な無菌状態を保証することはできない.現在,羊膜を滅菌処理した凍結乾燥羊膜が開発されているが,生体由来の材料である限り,細菌の存在の危険性を完全に排除することはできない.また,羊膜の主成分であるコラーゲン線維を用いて,工業的に作られたコラーゲンシートも開発されているが,コラーゲンシートは羊膜に比べて剛性が高いために,細胞培養の基質には適していない.そのため,羊膜のように剛性が低く強度の高い材料の開発が待たれているが,現在のところ,羊膜自体の機械的特性も十分には明らかになっておらず,生体薄膜材料の機械的特性評価手法も確立されていないのが現状である.そこで,本研究では,生体薄膜材料の機械的特性評価に適した試験片の形状や試験片採取方法,さらには試験片チャッキング方法を提案し,角膜移植用羊膜を取り上げその機械的特性を明らかにすることを目的として研究を実施した.試験片形状としては,帯状とダンベル状の2種類を用い,試験機への取り付け方法としては,挟み冶具とピン冶具の2種類を用いて引張試験を行い,これらの試験条件が,引張特性に及ぼす影響を検討し,羊膜の引張試験に適した手法を提案した.本年度までに,羊膜の引張試験には,試験片形状としては,ダンベル形状が適していること,チャックの冶具には挟み冶具が適していることが明らかとなり,上記手法により求めた羊膜の引張強度は6.80±0.22MPaと求まった.
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