研究概要 |
自動車車体用(ボディパネル用)薄板材について,高強度と高成形性能を兼ね備えた新規機能板材創製のためのプロセスメタラジー手法を開発した.アルミニウム合金A6022難加工材を対象に,異周速圧延工程により板材創製時にせん断集合組織{111}//NDを付与し,深絞り性(いわゆるランクフォード値,平均r値,およびその偏差)向上を目標とした非線形・熱-結晶塑性マルチスケールコンピュータシミュレーションに基づく多段圧延プロセスの最適化を実現した.熱間粗圧延後の6mm厚板材に対する多段圧延工程において,圧延温度,異周速圧延における異周速比を設計変数として,圧延後の板材集合組織についてr値を目的関数とした,離散最適化問題を定式化した.具体的には,2段温間圧延を想定し,成形性向上のため,平均r値(板材の垂直異方性)最大化と,r値の偏差(板面内異方性)最小化を同時に満たす多目的最適化問題とし,応答曲面法を採用して最適化を行った.その結果,圧延温度は250℃,1段目および2段目の異周速比はそれぞれ1.25, 1.65の条件が最適であることを見いだした. 本最適化の効果を検証するため,通常の等周速圧延板材A6022-T43が有する集合組織との比較を行った.その結果,最適プロセスにより創製された板材の平均r値は1.6倍向上し,r値の偏差は1.78倍減少することが明らかとなり,本研究成果の有効性を確認した. さらに金属材料の微視構造を的確に考慮するため,転移蓄積を考慮したひずみ勾配論と結晶方位差理論との関係性に着目し,結晶方位分布から結晶粒界における方位差を積極的に考慮するため,従来の結晶塑性構成式を拡張した新規結晶塑性硬化発展方程式を提案した.これにより,材料硬化,塑性変形誘起の集合組織発展(結晶方位回転)を高精度に予測可能な手法を開発できた.
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