本研究では、短パルスレーザによる高分子基板内部の3次元微細加工技術と、金属ナノ粒子ペーストの充填およびレーザ焼結技術を組み合わせた、全く新しいレーザアシスト3次元微細配線技術を提案し、その実現性を明らかにすることを目的とする。 まず、研究項目(1)として被加工材料の選定を行った。熱的/化学的に安定な2種類のポリイミド基板(デュポン株式会社製のベスペルSP-1ならびにTP-8000)を入手し、表面研磨後の透過率および反射率を測定した。その結果、TP-8000が加工用のレーザ波長(1064nm)において高い透明性(透過率約80%)を示すことが明らかとなった。また、~240℃の高い耐熱特性を有し、本研究で用いる金属ナノ粒子ペーストの焼結温度である220℃に耐える。次に、項目(2)として短パルスレーザによる微細加工特性の把握を行った。上述のポリイミド基板(22×22×t2mm)を120℃×1h加熱し残留水分を除去した後、短パルスレーザ(波長1064nm、パルス幅~60ps)を照射した。このとき、レーザ光の焦点位置の確認は赤外線ビューワを用いて行った。 対物レンズや加工パラメータを変えてその加工特性を評価した結果、倍率50倍の対物レンズで、パルスエネルギー約13μJを集光照射すると、基板表面に直径約120μm、加工深さ約150μmの微細加工が可能であった。また基板断面のSEM観察結果から、レーザ照射によるポリイミドの改質現象(直径50~100μm)、およびこの領域での薬品耐性の低下が確認された。これは、改質領域の選択的な除去による基板内部へのマイクロチャンネルの加工が可能であることを示唆している。しかしながら、チャンネル内部に充填した金属ナノ粒子ペーストの焼結による、厚さ7μm、間隔20~35μmの微細配線を実現するためには、加工/改質領域のさらなる微細化が課題となる。
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