研究概要 |
本研究では,木質材料の切削加工精度向上を目的として,チップソー,円形薄型圧電センサ・アクチュエータ,電極層からなる積層構造,すなわち圧電積層チップソーの振動特性および制振方法を解明することを目標とし,本年度は以下の成果を得た. 前年度に得られた工具鋼製チップソーの一表面に圧電フィルムセンサ,他方に圧電フィルムアクチュエータを積層した複合体,すなわち,圧電積層チップソーに対する共振周波数・振動モードの理論解を利用して,圧電フィルムアクチュエータに制御用電圧を印加した場合の圧電積層チップソーの変形を解明した.理論解に対して数値計算を実行することで,印加電圧の分布形状が変形に与える影響を解明し,アクチュエータとしての特性,特に「ふれ」低減のための複数同心円状領域への電圧印加法(分布数・分布強度・分布位置・分布幅)を定量的に評価した.さらに,遺伝的アルゴリズムを用いて,分布数・分布強度・分布位置・分布幅を設計変数とし危険固有振動数を最大化する最適化問題を解析し,「ふれ」を最も効果的に低減するための電圧印加法を見出した.その結果,圧電積層チップソーの開発上必要となる制御器に要求される特性を解明した.これらの結果は圧電積層チップソーの制振制御を検討するために不可欠な基礎データであるとともに,本研究で提案する圧電積層チップソーの実現のための基礎データを提供するものである.なお,これらの成果を国際学会で1件・国内会議で1件発表するとともに,国際学術論文雑誌に3件を投稿中である.
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