研究概要 |
ホウ珪酸ガラスおよび溶融石英に対して波長1064nm,パルス幅10psの超短パルスレーザを照射し,ガラスの直接微細接合技術を検討した.昨年度までの研究によってレーザ光走査速度は溶融領域の大きさに,パルス繰り返し数はマイクロバブル,クラックの発生に大きく影響することが明かとなってきた.これまでの結果を用いて熱応力解析により溶融領域の応力状態を件としたところ,レーザ光照射プロセス中は照射部周囲に高い引張応力が作用していることが明かとなった.そのため,不適切なレーザ光照射条件では溶融部周囲から放射状にクラックが発生していたが,適切な条件を用いることで応力集中を抑制でき,クラックの発生低減に効果的であった.さらに3点曲げ試験,およびせん断試験により溶融領域の機械強度評価を行った.3点曲げ試験では,低パルス繰り返し数では溶融部の強度が低下するが,適切なパルス繰り返し数を設定することで,溶融部は母材と同程度の曲げ強度が得られた.また,低い送り速度の場合,高い曲げ強度が得られるパルス繰り返し数の条件が広いが,送り速度が大きくなると高い曲げ強度が得られるパルス繰り返し数の範囲は少なくなった.次に,重ね合わせ溶接における接合部のせん断強度を評価するためにオプティカルコンタクト領域を十分に小さくし,リニアガイドを備えた試験方法により検討を行った.低パルス繰り返し数では曲げ強度同様,せん断強度は低い傾向を示したが,パルス繰り返し数の増大とともにせん断強度も大きな値を示し,適切なパルス繰り返し数では100MPa以上と非常に高いせん断強度が得られた.以上のように,超短パルスレーザを用いたガラスの微細接合法では,適切なパルス繰り返し数を用いることで母材と同程度の高い機械強度が得られることが明かとなり,産業へあ応用展開が期待される.
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