研究概要 |
本年度は,常温から極低温までのPDMSの粘着性及び硬度特性の変化と,切削性の変化を調べ,粘弾性高分子材料の粘着性と硬度が微細切削加工特性に及ぼす影響を実験的に明らかにすることで,提案した極低温マイクロマシニングの切削メカニズムを物理的視点から解明することを目的として研究を進めた.液体窒素を自動供給する冷却ユニットを製作し,これを用いて液体窒素下でのPDMSの特性を調べた結果,粘着性は消失し,硬度はアクリル程度まで高まることを確認した.また,切削性はガラス転移点近傍である-123℃付近から著しく向上し,ガラス転移点以下の温度環境でナノスケールの切り込みを与え延性モード切削を施すことで良好な加工面を得られることがわかった. 次に,極低温マイクロマシニング法における切削メカニズムを解明するために,ヘール加工により延性モードから脆性モードへの遷移現象を調べた.その結果,通常の硬脆材料における延性一脆性遷移現象とは異なり,延性一脆性へと遷移する間にむしれ領域が存在することが確認された.むしれ領域になると加工面性状が悪化する.このむしれ現象は切り込み深さが10μm付近で生じるため,これ以下の切り込みに設定し,極低温マイクロマシニングを行う必要があることがわかった.更に,極低温エンドミル加工における加工特性解析を行った.切削速度,一刃あたりの切り込み量と加工面性状の関係を調べ,最適加工条件を明らかにした.
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