研究概要 |
日本の製品開発の強みは,異部門間の緊密な意思疎通によって,多目的性能を満足する製品を生み出す「すりあわせ」技術であり,これは日本独自の日本の文化に根ざした設計方法といえる.しかし,この日本が誇る「すりあわせ」の製品開発そのものは人的貢献に頼るところが多く,現場では色々な歪みが生じている.本研究課題は,この「すりあわせ」の効率化を図るべく,3D-CADをベースとした協調設計支援システムを開発することを目的とする.平成22年度は,平成21年度の成果(セットベース設計手法により設計初期段階において複数の設計者の意図を満たす設計解集合を導出した)を元に,エージェント技術に基づく「設計解を求めるための設計指針提示システム」の構築を計画し,以下の研究成果を得た.(1)設計知識をエージェント化することにより,設計プロセスの進行とともに発生する新たな要求性能を満足する設計解を設計者に提示できた.(2)Quantitative Dependencyの理論を適用することで,設計修正により他の設計者が関与する要求性能にどの程度影響を及ぼし,多目的性能を満足させるためには設計変数をどの程度変更したらよいのかを複数設計者間で共有できた.(3)構築したシステムを無段変速機の3D-CADモデル間のすりあわせ設計に適用し,システムの有効性を示した.以上より,多くの課題を同時に満足できる解の範囲から,設計者間ですりあわせを進めることで,複数の設計者がお互いに満足する設計案を提示することが可能となった. 得られた成果は,査読付論文1報,国際会議論文3報,国内学会論文4報,招待講演2件にて発表した.
|