研究概要 |
近年,機械構造物の柔軟性を積極的に利用した新しい機構としてコンプライアントメカニズムが注目されている.コンプライアントメカニズムは通常の機構と異なり,ジョイントの代わりに構造物の柔軟性を利用することにより,一体型の構造で機構の機能を実現する.本研究では,コンプライアントメカニズムの新たな適用対象として,自動車のサスペンションに注目し,コンプライアントメカニズムに基づくサスペンション=コンプライアントサスペンションの設計法の確立と,その有効性の検証を目指す.本年度は,(1)3次元構造を持つコンプライアントサスペンションの設計法の検討と,(2)コンプライアントサスペンションの評価,(3)コンプライアントサスペンションの試作の3点について研究を進めた.(1)については,基礎的な検討を行ったが,現状ではまだ解決できていない問題が多く,次年度以降についても継続して検討を進める.(2)については,従来の静的特性の評価に加えて,振動特性の評価法の検討を行った.一般に,自動車サスペンションの振動特性の評価には,サスペンション単体ではなく,タイヤとサスペンション,ダンパー,車体からなる自動車システム全体を考える必要がある.そこで,コンプライアントサスペンションの評価においても自動車システム全体をモデル化し,解析を行うことで,既存の自動車サスペンションと同列に評価ができるようにした.また,最適設計法を用いて設計したコンプライアントサスペンションの振動特性を解析した結果,既存の自動車サスペンションに似た振動特性を持つことが確認された.次年度は,振動特性の評価を最適化の目的関数に取り入れ,振動特性の最適化を行えるようにする.(3)については,次年度以降に実施する予定のスケールモデルを用いた実験の準備段階として,最適設計法を用いて設計したコンプライアントサスペンションの試作を行った.
|